おすすめの山の本「クマにあったらどうするか」


みなさまこんばんは。西田です。今日はおすすめの本のご紹介。
昨今世間を騒がせているクマさん達ですが、とりあえずクマの事を知りたかったらこれを読んでください、というのがこの本です。
この本の語り手は姉崎等さんというアイヌのハンターさん、聞き手は片山龍峯さんという私の両親の知り合いでしてね。

アイヌ民族の知識は間違いなくこのアイヌモシリ(北海道)の歴史を裏付ける、生活・文化的に重要な知恵だと僕は考えています。
「自然を畏敬し共に生き、この世に無駄なものは一つもない」とするアイヌの生き方をベースとした自然への知恵が、姉崎さんの言葉によく表れていると思います。 自然に寄り添う現場からの知恵としてのクマ対策が、今の世の中には必要なんではないでしょうねぇ。

文中にはオソのような熊はなかなか捕まらないといった予言もされていて、読み物としても面白いですよ。
北海道の自然が好きな本格派の方にはぜひ。

2023/11/04 斜里岳登山ガイド

皆様こんばんは。ガイドの西田です。先日は関西からおこしのS様と晩秋の斜里岳へ登ってまいりました。

この時期は大体登山道下部は夏道で、ガマ岩から上あたりは雪が出てくるということが多いように思いますが、やはり今年は暖かいのでしょうね、頂上まで全く雪はありませんでした。麓から頂上までずっとプラス気温。この先冬の北海道はどうなってしまうんでしょうねぇ。アイゼン歩行の訓練でも出来ればと思いきや、そつなく2時半には下山出来てしまいました。

S様、この度はありがとうございました。また遊びに来てくださいませ~。

2023秋、最近のヒグマ事情

皆さまこんにちは。ガイドの西田です。最近とみに北海道のみならず日本全国で熊の人身事故や被害が頻出しており、マスメディアのニュースで取り上げられることが多くなりましたね。北海道でのヒグマの事故も2013年あたりから右肩上がり的に増えており、特に令和の時代に入ってからは、被害件数の増大はもとよりハイキングや登山行動中の事故も見受けられるようになってきてしまいました。つい先日は大千軒岳で登山者の事故があった模様ですね…。白雲の避難小屋でも随分長いことヒグマが近くに居座ってテントサイトが利用不可となっていたのも記憶に新しいところです。

そして、10月の半ばほどのことですが、とうとう私の友人からも被害者が出てしまいました。林道で親子熊に出くわし、肩を噛まれて複雑骨折。眼もやられて失明も懸念されるような事態だったようです。いよいよヒグマの脅威の拡大を実感してしまいましたね。昔の開拓時代のような北海道に戻ったかのようです。

さて、それでは登山活動において、どうこの昨今のヒグマ事情を乗り切るべきなのでしょうか。これはもう色んな事を一つ一つ注意深く行動するしか無いと思います。基本的に熊と鉢合わせにならないための行動をとる。 これは熊鈴、ホイッスルなどの利用(絶対に有効な手段ではないとも認識すべき)もそうなのですが、山の中、林道で素早い移動形態(走る、自転車、スキー)は用いるべきではないです。幌尻でトレランをやっている人が偶に居ますが、そのうち事故が起こりそうで怖いですね。沢沿いでもお互いの物音や存在が瀬音によってかき消されるので注意が必要です。また早朝薄暮時の行動は避ける。熊スプレーは必ず携行。連絡手段も必ずもつ。ヒグマ誘引となる匂いの元は身に着けない(落とさない)、などなど。ザックのデポはやばいという認識ももう流石に定着してきましたかね。基本的なことは守りたいところです。

皆様どうかご安全に登山されてくださいね。

登山靴の話(ゴロー・ブーティエル vs スポルティバ・エクイリビウム)

こんにちは、登山ガイドの西田です。登山において行動中にもっとも重要なギアといえば、それはもう登山靴ということになりますね。私は職業柄、登山靴には毎日毎日晴れの日も雨の日も大変お世話になっております。また、重要なギアなので最もこだわりや愛着も強いですね。ガイドは重めの荷物を担いでお客様の安全を確保しながら怪我無く、さまざまな悪路を年間何十日も歩き続けなければなりません。まぁ当然ですが登山がハードになるほど登山靴の重要性は増していきますね。それは一般登山者にも同じなのですがこれは軽視されがちで、山で見かけるかぎりスニーカーとそれほど変わらないような柔かめのライトな靴を履いている人が多いですね。「登山靴」といえないようなスニーカーに近いもの、トレランシューズやアプローチシューズを履いている人も多いです。が、基本的には足腰の筋力の弱い一般登山者の方が登山靴にかかる重要性は強いのですがね。 若い人やパワーのある人は、体力で全てをカバーすればスリッパでもなんでも大丈夫です笑

端的に申しますと、柔らかすぎる靴は登山行動中のリスクに繋がりやすいです。歩みスピードも落ち且つ疲労しやく、雪渓やザレ、岩稜などの不安定地形にも弱いです。なぜでしょうか?4WDの車の構造を考えてみましょう。スズキのジムニーやランクルなどの車はラダーフレームといって、シャシーがはしご状の構造になっており車体の剛性を向上させています。この頑丈な骨組みにより凹凸の激しい悪路などで車体が捻れたり撓んだりすることによるパワーのロスを防いでいるのですね。

これは登山靴も同じことが言え、高い剛性をもつ靴は不整地ほど真価を発揮します。柔らかい靴は靴全体が不整地形の凹凸をそのまま受け、ソールもロールして踏ん張りがききません。ソールパターンも倒れやすくフリクションが犠牲になりがちです。柔らかいアッパーは当然足首や甲などの保護力も弱いです。なんで、柔らかい靴は悪路では安定性が悪く滑る疲るというわけです。軽くて安めの値段設定なので、どうしてもみんな手を出しちゃいがちですがね。トムラウシや大雪山などを歩く一般的な用途の「登山靴」を想定しても、両手で 曲げようとしてもソールが屈曲しずらい程度の靴の剛性はあったほうがいいです。

私が個人的に最も信頼して長年履いているバランスの良い登山靴は「ゴロー・ブーティエル」(写真真中・右端)。この靴は表出し皮革とゴアテックスブーティでできており、巣鴨の職人さんがカウンセリングと採寸のすえセミオーダーメイドで作ってくれるド定番。 やっぱりオーダー&革のフィット感と質実剛健な作りは逸品です。ソールを 張り替えながら茶色は14年、黒い方は7年履きました。今シーズンはガイドが忙しく計画もハードだったせいか、どちらもミッドソールが破損してしまい退任となってしまいましたが、すぐさままた新しいのをオーダー中です。そしてびっくりしたんですが、電話で森本さんのお話を聞いたところ靴の状態から私の体型や足幅の変化を指摘されるんです…。 そしてミッドソールにも皮革を使った特別スパルタン仕様の一足を提案していただきました。いやぁ出来上がるのが楽しみ!

で、シーズン中にピンチヒッターで購入したのが最近山の中で見かける機会が多い「スポルティバ・エクイリビウム」(写真左端)。これは特に同業者が履いている人が多いので、気にはなっていたんですよね。印象としては最新の靴ということもありとにかく軽量。足入れも既成靴としてはトップクラスでしょう。しっかりとしたシャンク・アッパー剛性、であるにもかかわらず足首の屈曲性もいいですね。フリクションも相当いいです。これはアルプスの岩稜むけということもあるのでしょう。ただし、足がかなり蒸れやすいのが気になりました。靴の総評としてはすいませんすっごく良いのですが、所詮プレタポルテとクチュールの違いです。その道うん十年もの職人さんのカウンセリング付きのゴローはやっぱりすごいですよ。私はどちらかというと新しもの好きな気性ですが、登山靴の関してはオールドスクール派ですね。履き続けてきた結果としてますますゴローが好きなんでしょうがないっす。

有限会社ゴローさん、矜持を持った素晴らしい仕事を続けていてくれて感謝です!

有限会社 ゴロー (goro.co.jp)

2023/09/24 雌阿寒岳湖畔ルート登山ガイド

こんにちは。登山ガイドの西田です。先日は沖縄県からお越しのS様ご夫妻と共に雌阿寒岳は湖畔ルートへ行ってまいりました。お客様は北海道へは何度かおこし頂いているそうですが、遠く沖縄県から遊びに来て私へお声がけいただけるとは本当に光栄なことでございます。今度は私が沖縄県へ遊びに行きたい!

そんなこんなで、今年の遅い秋晴れの空のもと、湖畔ルートから雌阿寒岳へと登って参りました。このルートは雌阿寒岳の他のルートと比べても展望が良く、お客様の「なるべくなだらかな傾斜のルート」というご要望にぴったりだったため選択いたしました。登山者も少なく、ゆっくりと静かな山を楽しみたい人向けの好ルートですね。

さて、当日は朝7:00にイコロ駐車場で待ち合わせ~湖畔ルート登山口に移動、7:30登山開始、11時頂上着、15:00帰着という流れでした。とても気持ちのいい見通しの良い秋晴れの日で、暑くもなく寒くもなく絶好の登山日和でしたね。S様今回はありがとうございました。また遊びに来てくださいね。

雌阿寒岳・頂上より
雌阿寒岳・頂上より

ちなみに、この山行で今シーズンの夏山のご案内は最終となりました。今年は天候にも恵まれ、おかげさまでほとんどの計画がうまくいきました。プランをご体験いただいた全てのお客様に感謝申し上げます。ありがとうございました!

2023/09/15~17(予備日18日)旭岳~トムラウシ縦走登山ガイドプラン

皆様こんにちは。登山ガイドの西田です。9月も半ばを過ぎましたね。今年は暑い夏が続き、山中も異常な高温でなかなか大変でしたね。さて先日は、本州からおこしのK様、H様お二人を旭岳~トムラウシ縦走登山ガイドプランへご案内させていただきました。

初日は旭川空港にてお客様と合流。そのまま旭岳温泉へ移動。今回は山岳スキップさんの運転代行を依頼させていただいているので、車の予備キーを大雪山荘さんへお預けします。大雪山縦走は車の回しの問題がありますからね。山岳スキップさんを利用するとスムーズに車を旭岳からトムラウシ短縮登山口へ移送していただけるので、大変ありがたいです。

山岳スキップ
http://sangaku-skip.jp/

さて、入山初日。天候は朝から晴れ。 気温は15℃前後とかなり高め。この時期としては異常な高温と言っていいでしょう。 秋の澄んだ 空気のなか 6:30始発のロープウェイに乗って旭岳を登高します。ピーク着が9:00。少し休憩をして後旭のガレガレの下りを経て、北海岳着が11:30、白雲岳分岐が13:00。今シーズンのヒグマ頻出状況にあって、さすがに白雲岳分岐にはもうザックをデポする人は居ませんでしたね。白雲岳着が13:30。この暑さとあってはまだまだ紅葉はすすんでいませんが、素晴らしい秋晴れの景色でした。白雲岳避難小屋着が14:30。水場はかなりチョロチョロになっていましたが、まだ枯れてはいませんでした。そんなこんなで浄水したり夕食をとったりしつつ、19時くらいに就寝。冬用シュラフを持ってきたわりに、かなり暖かい小屋の中だったので、布団のように上にかけて寝ました。

翌日はいつものように4:00起き5:30発。この日の天候は曇模様であったものの早朝の気温としてはやや高めの10℃前後。風が5mほど。高根ヶ原付近の吹きっさらし地形では風がかなり抜けますが、この日はレインウェアやウィンドブレーカーを着るだけでなんとも無かったですね。6:30高根ヶ原分岐、9:00忠別岳、12:30化雲岳。歩みを進めるにつれ天気が良くなりまた暑くなってきました。全体を通してかなり異常高温の大雪縦走と感じましたね。この日の泊地ヒサゴ沼着は14:30。テン場にはテントが5張りほど。雪渓からの流水は僅かになっていましたが、なんとか取れました。(まぁここは沼の水もあるので、水には困りませんが。)あたりにはナキウサギの声がこだましておりました。夕食を食して19時就寝。

最終日は午後から天気が崩れる予報だったので、早めの3:30に起床、5:00出発。 天候は高曇りながらも雲海も広がる感じで晴れ間も覗いておりました。旭岳や十勝岳も時折雲に隠されながらも基本的にはすべて見通せております。天上の景色を望みながらロックガーデンのアップダウンを経てトムラウシピーク着が9:00。前トム平が11:00。短縮登山口着が15:00でした。蓋を開けてみれば、3日間ともずーっと見晴らしのいい最高の大雪縦走でしたね。今回は珍しくヒグマも見かけませんでした。予備日は荒天の予報だったので、里場の観光などを経て終了。K様、H様この度はありがとうございました。

ちなみに、大雪縦走は普通こんなに簡単にはいきません。この次の週には山中では気温が0℃近くまで一気に下り、霜や薄氷が観測されています。このような状況の急変が大雪山の怖いところなのです。 シーズンも終盤ですが、 紅葉の大雪もみなさまご安全に登山されてくださいね。

2023/09/06~08(予備日09日)幌尻岳新冠ルート

皆様こんばんは。北海道の登山ガイドの西田です。先日は初秋の幌尻岳を新冠ルートより登って参りました。今回は北陸よりおこしのT様お二人のパーティ。日本百名山・百座目の挑戦でいらっしゃいました。

幌尻岳・ヒグマ
幌尻岳・ヒグマ

さて、まずはガイドミーティング初日ふかふか亭にて前泊。翌日は6時発で岩清水林道を一路イドンナップ山荘へ。天候は晴れ後曇り。林道途中でヒグマの親子の姿あり。8:30、イドンナップ山荘より林道歩き開始。14:30新冠幌尻山荘着。山荘到着後に夕立の雨。ガイドパーティ、一般登山者などで我々を含めて20人ほどが宿泊。16:30頃夕食を食して就寝。

幌尻岳・イドンナップ山荘
幌尻岳・イドンナップ山荘

翌日は4時おき5:30発で幌尻岳ピークアタック。天候は晴れ。空気が乾燥していて、草露がほとんどついていない。ピーク着が11時。予定より一時間遅れ。晴れていて展望が良い。今シーズン一番の天気。花はエゾオヤマリンドウや、イワギキョウ、アキキリンソウが咲くくらいで、ウラシマツツジも紅葉が始まっており、もうすっかり秋の気配。ピークにて記念写真の後下山開始。山荘着が15:00頃。16:00夕食、19時就寝。

幌尻岳・ウラシマツツジ
幌尻岳・ウラシマツツジ

翌日は5:15頃山荘を出発。10時イドンナップ山荘着。車で林道を抜けたのが、12:30頃。今回は今シーズンもっとも天候に恵まれた催行となりました。秋はアブも少ないし、気温も暑すぎず寒くもなくちょうど良いですね。T様この度はありがとうございました。また遊びにいらっしゃってくださいね!

幌尻岳・頂上より
幌尻岳・頂上より

ちなみに、当方での今シーズンの幌尻岳の催行は全部で5回(チロロルート、額平川ルート×2、新冠ルート×2)全パーティが登頂を果たすことが出来ました。かなり幌尻岳の催行には良い年でしたねぇ。

2023/08/28~30幌尻岳額平川ルート(予備日31日)

みなさまこんにちは。登山ガイドの西田です。先日は本州からフェリーにておこしのY様パーティを幌尻岳へご案内させていただきました。この数年の幌尻岳額平川ルートはコロナ&林道の通行止めなどと数年来もの足踏みを余儀なくされておりましたので、このほどの山行はまさに満を持してのものとなりました。

さて、いつものとおり前泊は「豊糠山荘」にて。まずは山行の完遂を祈っての乾杯となります。もちろん夕食のメニューはジンギスカン。なかなかどうしてここのジンカンも美味なのでして。ここ豊糠山荘には北海道には珍しく客室にクーラーが部屋についているのです。う〜ん快適。

そんなこんなで8月28日、天候は晴れ時々曇と上々。いつものとおりバスは8時発の2番に乗りまして、9時に2番ゲート着。林道をてくてく歩いて北電取水施設着が11時頃。渡渉ポイントから四の沢出会いが12:30。幌尻山荘着が13:30頃。この日は我々を含めて、宿泊客は20人ほど。えーと…あれ?予約時の大混雑・即完売状況はなんだったのでしょうか。

翌29日はアタック日。別のガイドパーティが10人ほど。4時起き5時発。命の泉7時着。カールバンド7時着。カールの中にゆったりとヒグマが朝ごはんを探して動いているのが見えました。頂上着が9時。あいにくガスが上がってきたのでトッタベツラウンドはパス。のんびり写真をとって、小屋帰着が13:30。この日は午後発のパーティが居て19時オーバーの小屋帰着となっていました。多分ガイドパーティですが、こういう無茶な時間割はどうかと思いますね。この日はトッタベツラウンドはやめて、パワーが幾分温存されたので、翌朝の下山は1便にすることに。機動力が十分なパーティであれば、5時発で1便に乗ることが出来ます。

今回は額平川の水も少なく天候も安定していて、そつなく登頂安着が果たせました。Y様、この度はありがとうございました。またよろしくお願い致します!

2023/08/22~23(予備日24日) カムイエクウチカウシ山登山ガイド

こんにちは北海道の登山ガイドの西田です。今シーズンは暑いですね~。8月も下旬だというのに連日30℃以上で、いよいよ北海道の家でもクーラーが無ければ辛い感じになってきてしまいました。さて、そんな暑さ真っ盛りの最中に、この度はカムイエクウチカウシ山に行ってまいりました。今回ご案内させていただくのは、静岡県からおこしのO様。100名山を完登されて、200名山をも登られているというベテランの登山者さんです。

カムイエクウチカウシ山・八ノ沢出会い付近
カムイエクウチカウシ山・八ノ沢出会い付近

さて、入山初日は朝8:00頃から札内ヒュッテ先の駐車帯よりカムエク名物自転車アプローチにて七の沢出会いへ。これがまた全装で自転車を漕ぐというなかなかにキツイ作業。しかし自転車がなければ軽く一時間以上は余計にかかります。行きはじわっと登りなので汗が吹き出していきます。と、一時間ほどで七の沢出会いへ到着。自転車をデポして橋のすぐ脇より早速入渓。渡渉は基本的に河原の広く浅く流れのきつくないところを渡ります。カムエクは以前からそうでしたが、河原を避けた森の中に踏み跡がかなりついていて、半分以上陸の上を歩くことが出来ます。これは良いことなのかどうなのかはさておき、結構早めに八ノ沢へついてしまいます。と、七から2時間かからないくらいで八ノ沢へ。

カムイエクウチカウシ山・八ノ沢中間部
カムイエクウチカウシ山・八ノ沢中間部

八ノ沢からは、河原の石がだんだん大きくなるので、なれない人は渡渉に苦労するかもしれませんね。とくになれない人はストックに頼りすぎる傾向があるので注意してください。ストックに変な荷重をかけると、石に挟まって折れてしまいます。折れたストックの残骸が何本か転がっていました。と、出会いから2時間ほどで三股出会いに到着。ここは非常に快適なテン場ですが、テントは4~5張りくらいしか張れません。テントサイトの脇で焚き火をすることも出来ます。沢といったら焚き火ですからねぇ。水を浄水したり、食事をしたり、行水をしたりで、なんやかんやで19時位に就寝。

カムイエクウチカウシ山・三股テン場
カムイエクウチカウシ山・三股テン場

翌日は4時おき5時発、テントや泊装備をデポしてアタックにでかけます。この時最も要注意なのは、テントには絶対に食べ物や飲料、食器、行動食など匂いのするものを残してはいけません。ヒグマの誘引につながるからです。1970年の福岡大ワンゲル部のヒグマの事故はヒグマの誘引からザックの取り返しによる行動が要因となって学生3人が犠牲となっています。テントサイトはもちろん、行動中のすべての瞬間において食べ物は当然のことながら行動食の包み紙やペットボトルなどを落としたり失くしたりといったことはご法度です。私達は一応ヒグマの忌避剤をテント周りに撒いてアタックにでかけました。

カムイエクウチカウシ山・八ノ沢カール
カムイエクウチカウシ山・八ノ沢カール

三股からの急峻な滝沿いの登りと、八ノ沢カールからのカールバンドの登りを経て、4時間ほどでピークへ到着。天気は最高で、日高山脈の360度の景色が見渡せました。札内岳、北カムイ、エサオマントッタベツ岳、1839峰、1823、幌尻岳などなど。周りには百名山などとは一味違った、本気の山屋しか手を出せない日高の名峰がずらりと並んでいます。暑くなかなか大変な登りでしたが、素晴らしい頂上でした!一応予備日を設定してあったので、八ノ沢あたりで一泊してから帰っても良かったのですが、時間もなんとかなりそうなことと、体力的にも問題なさそうということで、この日の中に下山しようということに。三股のテントを畳んで、行水しながら八ノ沢を降り(15:00)、陸の高速道路をテクテクあるいて七の沢まで下って(16:30)、駐車帯に到着したのが18:00でした。

カムイエクウチカウシ山・1839峰方面
カムイエクウチカウシ山・1839峰方面

O様、この度はありがとうございました!易しくは無かったけど素晴らしい山行でしたね!また遊びにいらっしゃってくださいね。

2023/08/10~12(予備日13日)幌尻岳新冠ルート登山ガイド

皆様こんばんは。登山ガイドの西田です。先日は新冠ルートより幌尻岳へ登って参りました。今回で幌尻岳は今シーズン3回目。ご一緒させていただくのは、御歳77の男性K様でいらっしゃいます。このK様、コロナ禍&林道通行止めなどにより幌尻岳の挑戦は3年越しとなり、額平川ルート・幌尻山荘の予約争奪戦に敗れ、新冠ルートへの転戦となったのでした。因みに、もし額平川ルートで予約が取れていたら、先の大雨による増水によりどうなっていたかはわかりません。これも運と言えるでしょうねぇ。

さて、いつもどおり前泊は「ふかふか亭」。美味しいご飯と快適な一夜を過ごした我々は一路岩清水林道をイドンナップ山荘へと向かいます。天候は曇。昨年の大雨の被害は甚大でしたが、さすが日高南部森林管理署さんと新冠の工事業者さんですね。あれだけ酷いズタズタだった林道も今年はすっかり元通りに。3時間ほどのドライブの後イドンナップ山荘駐車場へ車をデポ。いつもどおりゲートの隙間をくぐって幌尻林道へ。

長い長い林道をヒグマ避けの声を出しながら、いこい橋〜大理石沢〜雷沢〜原石沢〜奥新冠ダムと歩みを進めます。今年はアブはそれほど多くないようですね。額平川ルートほどヒグマの痕跡は多くは無かったです。とはいえ糞は3箇所ほどありましたが。この林道は当然ながら行きはほぼじんわりとした登りなので、初日の重いザックを担いだ身にはこたえます。そんなこんなで6時間ほどの林道歩きで新冠幌尻山荘へ。登山者は小屋に10人ほど。沢での行水が最高に気持ちいい。

翌朝は4時起き朝食の後、5時出発。天候は晴れ時々曇り。昨年の大雨の影響は登山道にも及んでおり、下部の沢沿いの部分は流されて斜面のヤブを突っ切ったルートが新設されていました。チシマザサ生い茂る急峻な尾根を登り、お花畑に出るとこのあたりも登山道が流されている場所がチラホラと。咲いていた花はミヤマアキノキリンソウ、ミヤマアズマギク、ウサギギク、チシマフウロ、エゾツツジ、エゾシオガマ、サマニヨモギ、イワギキョウ、イワブクロ、アキカラマツ、ホソバトリカブト、ウスユキトウヒレン、ハイオトギリ、ミヤマリンドウ、エゾオヤマリンドウなどなど。もう花が秋のものになりつつありますね。そんなこんなで11時過ぎに幌尻岳頂上着。視界はまずまず。時間はかかりましたが、無事に登頂することが出来て何よりでした。

K様この度はありがとうございました。また北海道へ遊びに来てくださいね!