2024/03/08 白雲山登山ガイド

皆さまこんばんは。登山ガイドの西田です。今回は十勝平野や然別湖畔から悠然と望まれる白雲山へ登ってきました。お客様は、毎年お越し頂いているU様。この方は北海道の旅がお好きで何度も何度も足を運んでくれているマニアでして、オススメの場所や食べ物など、むしろ教えていただくことも多いようなお客様です。今回は然別の風水で集合の後、ヌプカの里登山口から日当たりの良い斜面をスノーシューハイキングで登行してみることにしました。(然別湖畔側の登山道は駐車場が離れていて、トンネルを通って結構歩かなくては到達できないので不便なのですよね。)

さて、牧草地の脇の登山口を9:20スタート。ここからすでに展望はなかなか良いのですがね。まもなく気持ちの良いダケカンバの樹林帯に入り、トラバース気味にドンドン進んでいきます。気温はそれなりに低いものの、天気がよく暖かい日差しが心地よいどころか暑くすら感じジャケットなどを脱ぎつつ調整します。のんびりとスノーシューをきしませながら登ること小一時間。「白雲山登山口~白雲山」という看板のある場所で登山道は沢筋から離れ、なかなか急峻な山腹斜面を駆け上って行きます。この山はユキウサギの足跡がとても多いですね。

標高が徐々に上がり針葉樹の混成を増しながら段々と空が近づいてくると、30分ほどで岩石山分岐に突き当たります。十勝平野や東ヌプカウシヌプリが綺麗ですねぇ。ここからさらに尾根筋を軽アイゼンに履き替えたりもしながら、一時間も進むと岩混じりの白雲山のピークです。頂上からは遠く然別湖はもちろん、ウペペサンケ山や南ペトウトル、日高山脈なども望まれました。視界が良くてとても気持ちのいいピークでしたね。

下山も足元に注意しながら、十勝平野を眼下に見ながら下っていきます。今度U様とお会いするのはパキスタン遠征の後だな…土産話をするのがまた楽しみだな、などと考えながら2時間ほどで登山口に戻ってきました。白雲山は十勝という場所柄、天候が安定していることが多く、短時間で登降できる近くて良い山。ですが、しっかりスノーシューワークや場合によってはアイゼンワークも要求される山です。晴れた日は展望もよく、初心者向けの冬山としてオススメの山です。

U様、今回もありがとうございました。またよろしくお願いします!

夏シーズンの登山ガイド・予約状況更新

皆様こんにちは。登山ガイドの西田です。そろそろ夏シーズンの北海道・登山ガイドのご予約・スケジュールの打診などなどが多くなってきました。

さて、今年のご予約状況ですが昨年ほどラッシュ状態でもなく、まだまだ空きがございます。当面9月上旬までのご予約カレンダーを更新いたしました。5月下旬~6月一杯はパキスタン・スパンティーク遠征のため策定ができなくなってしまいますが、遠征までに策定は済ませる形を考えています。今年の夏も事故無く安全第一で参りたいと心してご準備させていただいている次第でございます。どうかよろしくお願いいたします。

ゴローの登山靴・ブーティエル、開封&レビュー動画をYou tubeに公開

こんにちは登山ガイドの西田です。先日2月の半ばくらいのことですが、昨年2023年9月下旬に注文していたゴロー・ブーティエルがとうとう到着いたしました。私がブーティエルを作成していただくのは今回が3回めで、初代を14年、2代目を7年履きました。共にリソールは1回だけだったのですが、登山ガイドという職業柄やはり使い方が激しいようで…なんせ3シーズン全ての山でどちらかを履いていましたから…ちなみに数えてみると2023シーズンはお客様の登山のガイディングが30回ほどで、そのうち10回が山中泊付きの登山でした。まぁ、これでは登山靴も酷使と言って過言ではない状態でしょうね。しかも北海道の山の登山道はワイルダネス度が高く、登山靴への負荷も高いですからね~。リソールしながら7年というのもある意味よくもった方ではないでしょうか。初代が14年もったのは、最後の方は痛みすぎていてあまり履いて居なかったということもあります。一般の方でしたら何十年ももつかもしれませんね。

以前より私は再三申しておりますが、このブーティエル、履き心地はまずもって極上です。だってパターンオーダーですからねぇ。しかもオールレザーなので、履けば履くほどに足型によく馴染み、一度これを履くと他の靴では不満を感じるようになってしまうかもしれません。ただし、足型は人それぞれ千差万別なので、オーソドックスな足型で既成靴でもなんでも割とよく合うような人には色々な選択肢もあるので、この限りでは無いとは思いますが。目指す山も体力も人それぞれですしねえ。とはいえ、昔ながらの求道的な職人さんのカウンセリングを元に作成されるこの靴は、そもそもの作り・材質の良さも相まって、やっぱり素晴らしいと思います。登山靴界のオールデン、JMウェストンであります(知らんけど)。というかですよ、14年前のオーダー履歴がきっちりと残っていて、登山靴の痛み方の変遷から僕の体型変化などを踏まえたおすすめのカスタムなどを相談させていただけましたが…これって凄いことだと思いません?わたくしもこのようなお客様を思った仕立てのできるガイドでありたいと思っております。今シーズンはこの靴でお客様のご案内を差し上げようと思っている次第でございます。

そんなゴロー君への思いをこの度は動画にしてみました。一回ちゃんとまともにガイドとして、こういう語り込みの動画を作ってみたかったんですよねぇ。で、作ってみると以外なほど難しかったです。語りの部分の細かな修正はもちろん、光の具合やら、ホコリの映り込みやら…結構何十回となく撮り直してしまいましたが…所詮素人の余技ですが、ユーチューバーという人たちはこれを毎日のようにやっているのですから大変ですねぇ。とまぁ、そんなこんなでございますが、ゴロー・ブーティエルの開封&レビュー動画でした。ひまつぶしにでもご笑覧くだされば幸いです。

2024/02/23~24(予備日25日)斜里岳登山ガイド 

皆様わんばんこでございます。登山ガイドの西田です。先日は超極寒のマイナス20℃の中、斜里岳へ登ってまいりました。今回ご案内させていただいたのは、最近は毎年2~3回も北海道へ遊びに来てくれている、H様ご夫妻。この方達は最初は阿寒やオンネトーのトレッキングから始まって、夏山登山、冬山へ、と段々ステップアップして、とうとう厳冬期の斜里岳へ挑戦していただく運びとなったのでした。きちんとした装備・服装、リスクコントロールの技術が出来ているお二人だからこそ完遂できた計画だったかと思います。

初日は絶好の天気の中、豊里から林道をスノーシューで歩きCo800m付近でC1。今回下ろし立てのエスパーステントと、MSRのストーブの炎のゆらぎが心地良い~。水作りを経て、夕食はジンギスカン。しっかりと栄養を摂ったので、夜にはテント内もマイナス15℃の世界となりましたが全く寒いとは感じませんでした。やっぱり食事は大切ですねぇ。

翌日はやや曇りがちながら青空も見えているといった天候の中、アタック装備にてスノーシューでサクサクと登行。流石に気温が低く、休憩していると寒くなってきます。Co1250付近でアイゼンに履き替え、段々と細くなっていくリッジや北壁花道手前の鎖場や、頂上直下の最後の登りも難なくやり過ごし、11時半に頂上へ到着。根北から上がってきた登山者さんに集合写真を撮っていただき早々と下降。下りでは天気が抜けるような青空となり、流氷を眺めつつの最高の天上のスノーシュー下降となりました。15時テン場撤収~16時登山口、17:30車止め着という流れ。素晴らしくよくコントロールされた、ナイスな登山だったと思います。

25日は能取岬でトレッキング。残念ながら流氷は接岸していませんでしたが、知床連山や遠音別岳、海別岳、斜里岳、摩周岳などが綺麗に見えておりました。やっぱり能取は素晴らしい場所ですよ。3日間とも最高の天気に恵まれ良き計画となりました。さてH様、次回のトムラウシでも良き自然の体験ができるといいですね!この度はありがとうございました。またよろしくお願い致します。

2024/02/12 阿寒の森トレッキング

こんにちは。登山ガイドの西田です。先日は久しぶりに阿寒でのスノーシュートレッキングを催行させていただきました。今回おこしいただきましたのは、オンネトーもご一緒させていただいたリピーターのT様ご家族3名様。当日の天候は晴れで、気温はマイナス5〜1度位だったでしょうか。阿寒としては温暖な朝で、おだやかな雰囲気の中スタートとなりました。雄阿寒の登山道下部をスノーシュートレッキングしながら太郎湖次郎湖などを歩くのですが、T様は久々のスノーシューと起伏のある地形にご苦労の様子。雪も焼結が進んでいないサラサラ雪で足が取られるため、歩きにくかったですね。そんなこんなで、普段より2時間位長い事遊んでしまいましたが、T様この度もありがとうございました。気が向いたらまた遊びにいらっしゃってくださいね!よろしくお願い致します。

2024/02/02 摩周湖トレッキング・阿寒アイヌコタン・屈斜路湖周遊

皆様こんばんは。2月の初旬に摩周湖トレッキング・阿寒アイヌコタン・屈斜路湖周遊をご案内させていただきました。今回のお客様はJTB経由でご依頼を頂いた海外からおこしのK様。阿寒湖の鄙の座にお泊りで、表題のようなリクエストしていただいたのでした。

アイヌコタンではアイヌシアターイコロ、私の母の刺繍、丸木舟制作の現場などを見学。それから移動車で摩周湖へ移動、なんと今回は運転手さん付きだったのですが…。摩周湖でスノーシュートレッキング。摩周湖のスノーシュートレッキングは催行が意外とというか、当然ながらというか霧の摩周湖といわれるだけに、視界が悪かったり、吹きさらしなだけに風が強いことが多く条件が難しいのです。なんで、私の場合屈斜路湖とセットにしておいて状況によってフレキシブルに変更が可能なように計画することが多いですがね。

この日は、歩いていると摩周湖の湖面が広く見えてカムイシュ島も遠望できるようにまでになりました。途中キタキツネに会ったりしながら硫黄山や砂湯なども周遊し、17時くらいに阿寒湖へ戻ったのでした。K様この度はありがとうございました。また遊びにいらっしゃってくださいね!

2024年 冬シーズンの買ってよかったおすすめのギア達

皆さまこんにちは。登山ガイドの西田です。以前アップした「買ってよかったギアたち」のページは当ホームページでも一二を争う人気記事でしてね。皆様山の装備や、便利グッズにはご興味がお有りのようですね。というわけで2024年の冬シーズンの買ってよかったおすすめギア達をご紹介したいと思います。

■TSL 418 UP&DOWN GRIP

これ(アイキャッチ画像)はおフランス製のスノーシューなのですが、正月のカムエクや2月の知床アイス探検で使用するために購入しました。大きな特徴は、ヒールリフターがクライミングサポートとして機能しつつも完全にキャンセルすることが出来、つまりブーツフィット部分がゼロポジションよりさらに地面側へ倒れ込む仕様になっており、下降歩行時のヒールステップの安定性がかなり高いことです。スパイクはピンのようなポイントと縦のギザギザ、前爪という構成でなかなか登攀性も高いと思います。実は当方ではお客様のレンタル装備として、スノーシュートレッキングで使っているものは廉価版の305 ACCESSというモデルで、これもダウングリップ以外は同じような仕様で、着脱が用意で軽快に使える機種です。なにより2~3万円で買える安さが良いですね。というより、私は某社の定番スノーシューは元価格もメンテナンス性もあまり良くなくて好きではないんですがね。ユーザー登録なしではベルトの交換すらしてくれません。TSLのスノーシューはガッツリ使い込んでおり、実績的に信頼感があります。モンベルからも機能性の高い新機種が出るようなので気になるところです。

■モンチュラ ライトキャップ

モンチュラ ライトキャップ
モンチュラ ライトキャップ

これはバラクラバ、いわゆる目出帽ですね。バラクラバは特に厳冬期の冬山でも悪条件下においてとても重要な装備の一つです。顔を強風や低気温による凍傷から守ってくれる心強い味方。ハードシェルのフードのフィッティングと合わせて、しっかりとこだわりたいところです。このモンチュラのバラクラバは何より立体裁断で顔や頭にきれいにフィットするところが素晴らしい!目周りや口元で余計なボリュームが出来ず視界が遮られないため足のステップが見やすいです。生地も適度な保温性と通気性が相まって心地よく、口に通気の穴が空いているのでメガネやゴーグルも曇りにくくなっております。耳も音が遮られないようにメッシュになってるという徹底ぶり!はっきり言って他のアウトドアメーカーのものは概ねワークマンで売られているものと機能的にはそんなに強い競争力を持っていませんが、このモンチュラのバラクラバは8800円しますが指名買いするだけの価値は十分にあると思います。こんなこに細部にこだわりのある逸品は他に無いと思いますね。

■プロテクトJ1

プロテクトJ1
プロテクトJ1

これはマラソンなど長時間のスポーツ時に使うための皮膚の保護用クリームです。普段重荷を担いで長時間歩くことの多い私にとって無くてはならないもので、靴ずれ予防として足にはもちろん、ザックのショルダーやウェストハーネスのスレ予防として、肩や腰などにも塗ったりします。効果も持続性も高く、登山には非常に有用なものですね。これを塗って更に局所的にテーピングなどで保護をすればかなり靴ずれは予防できるでしょう。山屋さんにはもちろん他のスポーツ愛好家にも非常におすすめできるものです。

■防寒テムレス+Tips

テムレス
テムレス

テムレスはもはや海外でもユーザーが多くいるほどの定番ですからご存知の方も少なくないことでしょう。もちろん素晴らしく有用なこの手袋ですが、冬の登山者向けにもう少し進んだティップスをお伝えしてみましょう。テムレスは操作性や快適性を重視し、保温性はそこそこのアイテムとして皆さん納得してお使いのことと思いますが、すこし保温性を上げられる工夫があるのです。それにはまず「アンダーカフ」で使うこと。つまりグローブの裾をジャケットの袖の中にたくし込んで使うことです。これだけで保温性は一段階上がります。そして「VBL」で使うこと。VBLとはベイパーバリアライナーの略で、簡単に言うと第一レイヤーに未透湿素材を用い覆ってしまう…早い話が一番下に薄々のビニールやニトリルなどの手袋などをつけることです。こうすることにより、汗の気化熱で手が冷えづらくなり、テムレス自体にも汗による湿気が移らなくなります。ただしこの薄々手袋はタイトフィットであっては血行を阻害し逆に寒くなるので、適度なゆとりが必要です。一番下のレイヤーにはすこし大きさにゆとりのある物をチョイスしましょう。ちなみにテムレスにはデメリットもあって、よく知られたビレイ・懸垂下降時の巻き込み不具合の他にも、低温環境でストックやピッケル・ショベルのグリップなどと共に雪を握り込んでしまうと氷化しやすいというのがあります。グローブが完全防水で薄い材質のため、雪が僅かずつ溶けてしまうためでしょうね。このようになってグリップに付いた氷を握り込んでいるとその氷がどんどん肥大していき、手も冷えて滑るので氷をその都度落とすしかないです。これは積雪時のアイスクライミング時にも滑る感じがになります。テムレスを使う際にはそれ相応の作法があるということですね。いずれにしてもこのグローブは、おおくのアウトドアメーカーの開発者が作ったグローブを差し置いて、もはや登山には無くてはならないものになったと言えます。

■ワークマン バズヒートフライヤーパンツ

ワークマン バズヒートフライヤーパンツ
ワークマン バズヒートフライヤーパンツ

ワークマンもまたアウトドアウェアメーカーにとっては恐ろしいほどの脅威で、多くのアイテムは登山活動に十分に使えてしまします。このバズヒートパンツは端的に言うとナノエアパンツみたいな透湿インサレーションパンツなのですが、機能性はなかなかどうして悪くないもので、透湿性・保温性ともに程よく十分です。もちろん本家のナノエアパンツも高機能なのですが、パタゴニアで滅多にラインナップに乗らず、なかなか買えません。それに引き換えワークマンの物はお店に行けばいつでも買えてしまいます。しかも安く。このパンツは大人気のようで、かなり売れているようですね。同素材のジャケットもあります。

2024/01/08 摩周・屈斜路湖&神の子池トレッキング

皆さまこんにちは。ガイドの西田です。先日は表題の通り摩周・屈斜路湖&神の子池トレッキングを周遊プランとして催行させていただきました。このプランは、エリアが広いので一日で行けるギリギリの線を攻めています笑。今シーズンは雪は少ないですが、なんとかスノーシュで歩けるくらいには積雪もあり、静かなウォーキングを楽しめました。某リゾート開発の資金が入るらしいこの地域ですが、やっぱり見どころは多いですね。M様また遊びに来てくださいね!

2024/01/05~06 上ホロカメットク山&三段山BC・登山ガイド

皆様、こんばんは。先日は常連のお客様HA様と上ホロカメットク山と三段山へ雪上トレーニングとバックカントリースキーを目的として行ってまいりました。最近の北海道は本当に雪が少ない!それでもなんとか天候によるリスクや積雪などを考慮し白銀荘ベースでこのような計画を提案させていただきました。強風や雨で雪面状況はなかなかリスキーで行動が制限されましたが、やっぱり三段山のパウダーと白銀荘のあずましさは素晴らしいです。夕食は上富良野の「まるます」にて焼肉を食しました。HA様、またお時間があるときにでも遊びにいらっしゃってくださいね~!

登山靴の話(ゴロー・ブーティエル vs スポルティバ・エクイリビウム)

こんにちは、登山ガイドの西田です。登山において行動中にもっとも重要なギアといえば、それはもう登山靴ということになりますね。私は職業柄、登山靴には毎日毎日晴れの日も雨の日も大変お世話になっております。また、重要なギアなので最もこだわりや愛着も強いですね。ガイドは重めの荷物を担いでお客様の安全を確保しながら怪我無く、さまざまな悪路を年間何十日も歩き続けなければなりません。まぁ当然ですが登山がハードになるほど登山靴の重要性は増していきますね。それは一般登山者にも同じなのですがこれは軽視されがちで、山で見かけるかぎりスニーカーとそれほど変わらないような柔かめのライトな靴を履いている人が多いですね。「登山靴」といえないようなスニーカーに近いもの、トレランシューズやアプローチシューズを履いている人も多いです。が、基本的には足腰の筋力の弱い一般登山者の方が登山靴にかかる重要性は強いのですがね。 若い人やパワーのある人は、体力で全てをカバーすればスリッパでもなんでも大丈夫です笑

端的に申しますと、柔らかすぎる靴は登山行動中のリスクに繋がりやすいです。歩みスピードも落ち且つ疲労しやく、雪渓やザレ、岩稜などの不安定地形にも弱いです。なぜでしょうか?4WDの車の構造を考えてみましょう。スズキのジムニーやランクルなどの車はラダーフレームといって、シャシーがはしご状の構造になっており車体の剛性を向上させています。この頑丈な骨組みにより凹凸の激しい悪路などで車体が捻れたり撓んだりすることによるパワーのロスを防いでいるのですね。

これは登山靴も同じことが言え、高い剛性をもつ靴は不整地ほど真価を発揮します。柔らかい靴は靴全体が不整地形の凹凸をそのまま受け、ソールもロールして踏ん張りがききません。ソールパターンも倒れやすくフリクションが犠牲になりがちです。柔らかいアッパーは当然足首や甲などの保護力も弱いです。なんで、柔らかい靴は悪路では安定性が悪く滑る疲るというわけです。軽くて安めの値段設定なので、どうしてもみんな手を出しちゃいがちですがね。トムラウシや大雪山などを歩く一般的な用途の「登山靴」を想定しても、両手で 曲げようとしてもソールが屈曲しずらい程度の靴の剛性はあったほうがいいです。

私が個人的に最も信頼して長年履いているバランスの良い登山靴は「ゴロー・ブーティエル」(写真真中・右端)。この靴は表出し皮革とゴアテックスブーティでできており、巣鴨の職人さんがカウンセリングと採寸のすえセミオーダーメイドで作ってくれるド定番。 やっぱりオーダー&革のフィット感と質実剛健な作りは逸品です。ソールを 張り替えながら茶色は14年、黒い方は7年履きました。今シーズンはガイドが忙しく計画もハードだったせいか、どちらもミッドソールが破損してしまい退任となってしまいましたが、すぐさままた新しいのをオーダー中です。そしてびっくりしたんですが、電話で森本さんのお話を聞いたところ靴の状態から私の体型や足幅の変化を指摘されるんです…。 そしてミッドソールにも皮革を使った特別スパルタン仕様の一足を提案していただきました。いやぁ出来上がるのが楽しみ!

で、シーズン中にピンチヒッターで購入したのが最近山の中で見かける機会が多い「スポルティバ・エクイリビウム」(写真左端)。これは特に同業者が履いている人が多いので、気にはなっていたんですよね。印象としては最新の靴ということもありとにかく軽量。足入れも既成靴としてはトップクラスでしょう。しっかりとしたシャンク・アッパー剛性、であるにもかかわらず足首の屈曲性もいいですね。フリクションも相当いいです。これはアルプスの岩稜むけということもあるのでしょう。ただし、足がかなり蒸れやすいのが気になりました。靴の総評としてはすいませんすっごく良いのですが、所詮プレタポルテとクチュールの違いです。その道うん十年もの職人さんのカウンセリング付きのゴローはやっぱりすごいですよ。私はどちらかというと新しもの好きな気性ですが、登山靴の関してはオールドスクール派ですね。履き続けてきた結果としてますますゴローが好きなんでしょうがないっす。

有限会社ゴローさん、矜持を持った素晴らしい仕事を続けていてくれて感謝です!

有限会社 ゴロー (goro.co.jp)