2018年9月18日~19日 芦別岳・γルンゼ

いよいよ秋も深まりつつある今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。少し前の事になりますが、ややマニアックな…というより皆名前は知ってるけどあまり行ったという話を聞かない沢の記録をまとめておこうと思います。ちなみに今山行の記録や写真は「新版・北海道の山と谷」の第三巻に掲載予定ですので、ぜひ買って見て下さい。

芦別岳はγルンゼ…この沢は普通、雪渓の残った状況で奥壁のアプローチとして通過されることが多いと思います。が、なかなかどうして夫婦岩まで詰める過程には九本の滝が連続しており、特にF7からは!!!の手強さ。しかもボロボロであんまりピンも取れず、なかなかヤバい沢なのでした。ま、それも行く前から承知の上で、実は僕らはずいぶん前から行こうとしては天気に恵まれずといった有様で数度のシーズンが過ぎ去ってしまったのでした。
そんな純度高めなデンジャラスゾーンに付き合ってくれたのは、いつものOさんに加え、なんと札幌登攀倶楽部のN水さん…という豪華で強力な布陣による山行と相成ったのでした。

F7の岩を潜り抜けて出てきたO氏
F7の岩を潜り抜けて出てきたO氏

9/18 晴れ時々雨 13:00旧道登山口~15:00ユーフレ小屋

まずはアプローチの前日。いくらか大気状況が不安定で、太陽の里までの移動中にも雨が降ったり止んだり。昼頃から旧道をユーフレ小屋までえっちらと歩く。道中、N水さんはキノコ採集に勤しみ、夜は河原にて焚火&キノコ入りジンギスカン。秋風がもはや涼しく心地よい。思えば今年初にして最後の焚火。夜半に激しく雨が降る。

9/19 晴れ 6:00ユーフレ小屋~6:45ゴルジュ巻き~7:20γルンゼ出合い
~8:30F7~9:30F8~10:45F9~13:20上二又~14:00夫婦岩北峰と南峰のコル
~16:00ユーフレ小屋~17:10旧道登山口

4時起床でキノコ入り焼きそばを食して泊装備をデポして6時発。ユーフレ本谷のゴルジュを高巻いてα・βルンゼを見つつγルンゼまでは小屋からおおよそ一時間半。出合いが既にF1の滑滝である。
端的に言うとこのγルンゼは、入ってすぐより普通の沢で云う核心部に放り込まれる感じ。F1~F3といきなり岩々していて気が抜けない。しかもボロボロ。触れる岩の全てが信用できません。
何かの記録でF4では木がもたれかかっていて直登したと読んだような気がするが、その木は滝から外れていて、どう見ても直登は出来そうもなかったので高巻く。次々と連続する滝を超え、左股の奥に文字どおり奥壁見つつ、巨大チョックストーンのはまったF7までやって来た。核心部は間違いなくこのF7からで、ここからがこの沢(実質日帰りであるにもかかわらず)を!!!足らしめていると言える。

F7
F7

そして、このF7は一見巨大チョックのハングの乗り越しがカムイ岩のカンナカムイばりのストレニュアスな仕事を必要とするかに見えるが、よく見てみると岩の陰から光が射しているではないか。N水さんがカムとハーケンを極めてちょっと見てみるわと登っていくとチョックの奥に穴が開いていて上に抜けれるのであった。まぁ、旧山谷をよく見るとちゃんと奥が抜けれると書いてるんであるが。ただしチョックまで至る下の部分も結構悪い。チョックの上には新しめのリングボルトが支点用に二発入っていた。
続いてF8。この滝は一見傾斜もゆるく優しそうに見えるが、取りついてみると肝心な所で外傾していたり心もとないトラバースがあったり、なかなか気が抜けない。僕は自分がトップを名乗りあげたものの、登りながら止めとけば良かったかな…と思ってしまった。

F8
F8

そして問題のF9である。この滝は本当に悪いです。難しいうえにボロボロでピンもあまり取れず、しかも側壁も高いので巻きもかなり悪そう。僕は正直ハナっから大巻きの長時間藪漕ぎを覚悟していた。が、N水さんはこの滝を落ち口まで登る気満々で巻きルートの見当すらしない。
して、ダブルロープを付けた御大はさすがひょいひょいと難しげもなく左岸のテラスまで登って行き、そこから左にトラバース、したところで一発古いボルトを見つけたようだ。
ここまで相当の落石が下にいる我々を襲ってきた。
そこからさらに直上し落ち口を目指すものの、どう見ても立っている上に細かそうでかなり悪い。ピンの入るような余地もなく…ハーケンをなんとかして打とうにも、打ってるうちに岩が砕けてしまうのである。しかもロープがだいぶ屈曲して重そう。ここで御大はやおら懐よりボルトセットを取り出した…ところでなんとハンマーを落としてしまう。
「う、これはいかんいかん」などと言いながらロープの屈曲部まで戻って、片方のロープでハンマーを上げ元の所へトラバースで戻ってボルトをカンカンと打った。そして、「よっよっ」と言いながら落ち口の上へ消えていった…。
こうやって書くとこの一連の動作はにべもなく思えてしまうが、当然ながらめちゃくちゃ悪い壁の中でこれをやってるんである。フォローでトレースしてみるとトラバースの部分などはどこへ足を置いたんだと思うくらいに悪かった。ましてハンマーを落として往復するとは…。しかもこの不安定な立地条件でボルトを打って直上するとは…いやぁ神技とはこのことですなぁ。
ちなみに、このボルトは岩の性質上効き目は不明である。行かれる方は自己責任で…。

芦別岳ガンマルンゼF9にて
芦別岳ガンマルンゼF9にて

二時間の死闘の末F9の上に抜け、程なく上二又にたどり着く。ここからリッジを登れば、南峰南稜、左股を進めば南壁の取りつきに至る。時間も押し迫っているので、我々は一番近道の右股経由の夫婦岩南峰と北峰のコルへと進み中央ルンゼを下降、夫婦沢を下りユーフレ小屋で泊装備を回収し旧道登山口に下山した。

やっぱりN水さんは神ですね。山ヤのマイケルシェンカーですわ。改めて実感した今山行でした。γルンゼはボロボロ&シビアな滝が出てきておススメのルートです。一度お試しあれ。

2018年4月23~24日 芦別岳・本谷&Ⅰ稜

N君の結婚式を終えて、天気の良いうららかな春の日に芦別岳を訪れてみました。北海道の春の味覚といえばやはり行者ニンニク!行者ニンニクと言えば芦別岳!なんでここはこうもネギが多いんでしょう?ビールでも飲みながらO氏とネギだくジンギスカンと洒落こもうと思いきや…もうちょいで飯をくいっぱぐれるかもしれなかった面白おかしな山行でした。今回初めて登ったⅠ稜はやや藪っぽいリッジでしたが、芦別岳や十勝連峰の展望が素晴らしいルートでした。今回は新しいGoproで撮影してみました。

芦別岳のアイヌネギ
芦別岳のアイヌネギ

23日晴れ
8:30 旧道登山口~10:20 ネギ採り~11:00 ユーフレ小屋~11:40 本谷ゴルジュ~15:00 芦別岳ピーク~16:15 ユーフレ小屋泊

暖かい天気のいい日。旧道のアップダウンは大汗をかいてしまう。のんびりと進んで、途中の河原でネギを採集。ほんの数分で軽めに二袋分。ユーフレ小屋に泊装備を置いて本谷を登る。やっぱり今年は雪が少ない、が、やっぱり本谷の中はそこかしこデブリの山。ゴルジュの雪は低くなってクラックが入って気持ち悪いが、まだ大丈夫なようだ。でかいキノコ雪も結構気になる。
1時間半ほど登ってⅠ稜の取り付き付近を偵察。ニペソツ東壁とは打って変わってわかりやすいスカイライン。適当に側壁からリッジに上がって、そのままひたすら藪っぽいリッジを登高すればピークへ導かれると見た。運動がてらピークまで上がって一時間ちょいで小屋まで下った。
さて、今山行の核心はここからであった。なんと二人ともライターを忘れて飯が食えないんである。しかしO氏が床板の下から腐ったさびさびライター(当然点かない)を見つけてきて、そのライターを分解して圧電装置をガスに近づけてなんとか着火したという事件があった。

24日晴れ
6:00 ユーフレ小屋発~8:45 Ⅰ稜取り付き~9:30 2P目~10:00 3P目~10:30 4P目~10:40 5P目~11:10 6P目~11:30 7P目~12:15 8P目~12:30芦別岳ピーク~14:30ユーフレ小屋~16:30旧道登山口

小屋のネズミの運動会もなんのその、ぐっすり眠って今日も元気に本谷に入る。
さすがO氏は昨日の疲れも全く見せず、さっさとⅠ稜までたどり着いてしまった。稜を頂上側に回り込んだ藪ミックスの雪壁からロープを付けてリッジに乗りあがることにする。2Pまるまる伸ばしてリッジにたどりついたはいいが、気温が高く汗をかきまくる。さらに緩い藪リッジに40mほどロープを伸ばすと広めのルンゼが出てきた。このルンゼをかすめるようにしてリッジを巻き上がると、両面の展望が開ける。さらに進むと今度は一段下がったコルの先に短い凹角がでてきた。これはビレイ点から見ると立っていて難しそうに見える。が、近寄ってみると寝ていて大したことはない。
ここから1P繋ぐとピークにたどり着いた。
全く風もなく気持ちのいいピーク。十勝連峰が雲間に見え隠れしている。
デナリではこんなにのんびりと春の日差しや風を楽しめないだろうな。生きて帰ってきたらどこの山へ行こう。いやいや帰ったら即知床のガイドだな~などと考えながらのんびり下ってユーフレ小屋で泊装備を片づけて16:30には旧道登山口におりましたとさ。

2016年9月20日~21日 ポントナシベツ直登沢

ポントナシベツ直登沢・テン場にて
テン場にて

2016年9月20日~21日、目下鋭意編集作業中の新版「北海道の山と谷」の踏査で、ポントナシベツ岳直登沢に行って参りました。今年はお盆明けより天候が最悪…。連続台風により日勝峠をはじめ国道や高速道路などの通行止めが相次ぎ、十勝や日高など平野部の水害規模も大きく、沢登りの計画は中止に次ぐ中止となってしまいました。中の川右股、アルファ&ガンマルンゼ、ポントナシベツ直登沢と、大きな計画の中止を続けざまに余儀なくされてましたが、三度目の正直としてやっとポントナシベツの完遂を果たすことができました。

ポントナシベツ直登沢・直登沢出合の大滝
直登沢出合の大滝

久しぶりの大きめの沢で、焚き火やツェルト泊、夜空の星、大滝の高巻きなどを堪能できました。この沢の核心、直登沢大滝の岸壁はかなり崩壊しているようで北大Pが登ったときのクラックや凸凹はスッキリと無きものに…。元々斜めに走っていた水流はすだれ状に広がっていました。いやはや、今年は沢登りには辛い年でしたね。