2023/03/01~03/11 乗鞍岳、木曽駒ヶ岳、常念岳、聖岳、八ヶ岳、トレーニング自主登山

みなさまこんにちは、ガイドの西田です。山トレ&本州山域の経験値を上げようということで、私とし ては珍しく本州にて表題のようなハシゴ山行をしてまいりました。 新潟へフェリーで入って南下、北アルプスの山々を見ながら登山をしつつ、食べ物や名産、温泉など、 その土地々々の風物を経験するのはまことに楽しかったです。 また、山行としては、北海道の山との違いや、装備や行動様式の差異なども感じました。自分なりに 色々な経験ができて良かったです。

乗鞍岳ピーク方面

03/01 乗鞍岳

まずは足慣らしに日帰で乗鞍に登りました。スキー場のリフトを2本乗り継ぎ、上部を登って行きます。ただ、上のカモシカリフト駅を降りると、すでに2000m以上の標高で登山当日はなかなか風が強く、思いの外難儀しました。手軽に登れてしまう3000m峰ですが、地図読みやホワイトアウトナビゲーション、雪崩や強風、低温などといった、3000m峰なりの当たり前のリスク管理が要求されるので、ナメてかかると危険な山です。リフトは下山時には使えないので、なんやかんや往復すると夕方まではかかります。今回私はスノーシューだけで登りましたが、スキーがあったほうがずっと有利な山ですね。

03/03 木曽駒ヶ岳

木曽駒は嫁さんと登ったのですが、この山もロープウェイで千畳敷カール(2629m)まで上がれるので、お手軽な登山としては最高の山です。アクセスが良いので人で混雑していました。菅の台バスセンターまでマイカーで行くと何かと混雑しているので、私達は駒ヶ根の駅前からバスに乗って、ロープウェイの乗り口であるしらび平まで行きました。千畳敷カールからの眺めは絶景で、この景色をみながらのんびりするだけでも行く価値はあります。この日は天気が良くて終始汗をかきながらの登高となりました。頂上からは常念を始めとする北アルプスの山々、乗鞍、御岳、甲斐駒や北岳、富士山など周りの山も全て見渡せて素晴らしかったです。

03/04~05 常念岳

この山は当初この旅程には入っていなかった山でしたが、現地で登山口が近いことがわかったのと、期間中の天気状況がちょうど良かったことから、登るに至りました。積雪期の常念は、「ほりでーゆ四季の郷」や「鳥川発電所」のある東尾根の東端から登ります。積雪状況は03/02のレスト日に偵察をしていて、行けそうなことはわかっていました。下降時にわかりましたが、この東尾根の下部はほぼ夏道のようにしっかりしたトレースが付いていて、雪がなくても登れるのでした。03/04に朝9時頃のんびり泊装で出発し、ほぼ夏道の下部をやりすごすとco1500くらいで雪が出てきます。以降は延々とスノーシューで樹林帯の尾根を登高します。樹林が切れるco2200あたりにテン場があり、みんなそこでテントを張っていました。このテン場はもう森林限界の上なので、天気が悪いときはもっと下でテン場ってももいいかもしれませんね。で、翌日無風快晴のなか、アタックをして降りてきました。co2200以上の稜線は見晴らしが良く、天気が良ければ最高の景色が望めます。お隣に見える槍ヶ岳や穂高の山々は本当に素晴らしかったです。この山は危険箇所も特になく、天気が良ければ初心者の一泊二日の雪山入門には良いと思います。しっかりした冬山装備、アイゼンワーク、テント泊の技術、荷物を背負う体力などをトレーニングするにはいい山だと思います。

03/07~08 聖岳

この旅のハイライト・核心の山がこの聖岳でした。まず、林道が途中で崩れており、全行程でのルートが長く、また登高する尾根も急峻で全装で登るのはなかなか大変でした。ルートは夏道を率直にたどる形です。アプローチ時点で山の上部を伺うと雪の少なそうなことが見て取れていました。スタートは朝4:00柴沢ゲートよりヘッドランプをつけて歩き出し。便ヶ島、西沢渡を経て尾根取り付きが7:00頃。この林道は落石状況が今まで見た林道の中でもっとも酷く、戦場のように道やガードレールがズタズタになっていました。

西沢渡を渡渉すると、ようやくここから尾根の登高が始まります。この尾根がまた急峻で、一気に汗が吹き出します。登ることco1700あたりでやっと雪が出てきました。本州の山の下部はコリコリのアイスバーンになることが多いので、チェーンアイゼンがあると重宝するでしょうね。僕はもっていなかったので、スノーシューに履き替えてひたすら登りました。薊畑分岐(co2400あたり)についたのはもう昼で、ここに全装ザックはデポ、アタック装備に切り替えてアイゼンピッケルで聖岳ピークを目指します。

稜線に出ると、気温が高く雪がかなり腐っていて雪が団子になって大変でした。見晴らしの良い尾根をジリジリ休みながら登りましたが、やっぱり2000メートル台後半ともなると、幾分息が切れるようです。なかなかに急峻な頂上直下をやり過ごしピーク着が14:30。隣の仙丈ヶ岳がきれいに見えます。ここから、二時間ほどで聖平避難小屋に到着。疲れていたので、避難小屋はありがたかったです。

翌日上河内岳に登るか迷いましたが、雪がグサグサでナイフリッジが大変そうだったので、やめにしてゆっくり朝起きて下山しました。

03/11 八ヶ岳

八ヶ岳は今回の山行の中では唯一夏に登っている山です。当初、行者小屋テン場に一泊してから赤岳・阿弥陀岳に登ろうと考えていましたが、週末で人が多そうだったのと、聖岳で全装の登高に疲れていたので、ワンデイ軽量装備でスピードアタックすることにしました。出発は朝3:30、八ヶ岳山荘よりまずは林道歩き。一時間ちょっとで美濃戸山荘へ。ここから登山道が始まります。前日の雨が氷化しており、登山道は全域ウォーターアイス状態になってました。ルートが南沢に沿っているためかこの八ヶ岳は今回の山行ツアー中最も寒く、普通の春山装備だと少し肌寒かったです。co2000くらいでようやくアイスバーンが雪に切り替わりました。6:30行者小屋到着。ここから文三郎尾根を登高。森林限界以上からは横岳、蓼科、甲斐駒、北岳、仙丈などが望まれます。赤岳ピーク8:00着。更に中岳を経て阿弥陀岳にも登りました。

阿弥陀岳はなかなか急峻で、リッジ通しのルートは結構な高度感があるように見えましたが、登ってみるとうまく弱点が繋がれて合理的なルートになっていました。ただ、怖かったのは、アイゼンが雪団子になることで、これには非常に気を使いました。ピークにはアイゼンを履かずに御小屋尾根から登ってきた人もいてびっくり。阿弥陀岳11時着。ここから3時間ほどで下山。残念ながら八ヶ岳山荘にあるその場で焙煎してくれるオリジナルのコーヒー豆は買えず、山を降りて下諏訪の八木温泉に入って帰りました。

本州の山を登ってみて全体的に感じたのは、やはり北海道よりは圧倒的に山中に人が多いということです。気軽に山に親しめる環境というのは本当に恵まれていると思います。山麓の温泉やグルメ、観光地めぐりなど楽しみも非常に豊富。ただし、そのような手軽さ身近さもありながら、登山者の中には技術的に不安な感じを受ける方も少なくありませんでした。残念ながら、実際事故事例も少なくないので、しっかりとした技術・装備などを身に着けて、安全な登山を心がけていただきたいものです。