登山靴の話(ゴロー・ブーティエル vs スポルティバ・エクイリビウム)

登山靴、ゴロー・ブーティエル、スポルティバ・エクイリビウム

こんにちは、登山ガイドの西田です。登山において行動中にもっとも重要なギアといえば、それはもう登山靴ということになりますね。私は職業柄、登山靴には毎日毎日晴れの日も雨の日も大変お世話になっております。また、重要なギアなので最もこだわりや愛着も強いですね。ガイドは重めの荷物を担いでお客様の安全を確保しながら怪我無く、さまざまな悪路を年間何十日も歩き続けなければなりません。まぁ当然ですが登山がハードになるほど登山靴の重要性は増していきますね。それは一般登山者にも同じなのですがこれは軽視されがちで、山で見かけるかぎりスニーカーとそれほど変わらないような柔かめのライトな靴を履いている人が多いですね。「登山靴」といえないようなスニーカーに近いもの、トレランシューズやアプローチシューズを履いている人も多いです。が、基本的には足腰の筋力の弱い一般登山者の方が登山靴にかかる重要性は強いのですがね。 若い人やパワーのある人は、体力で全てをカバーすればスリッパでもなんでも大丈夫です笑

端的に申しますと、柔らかすぎる靴は登山行動中のリスクに繋がりやすいです。歩みスピードも落ち且つ疲労しやく、雪渓やザレ、岩稜などの不安定地形にも弱いです。なぜでしょうか?4WDの車の構造を考えてみましょう。スズキのジムニーやランクルなどの車はラダーフレームといって、シャシーがはしご状の構造になっており車体の剛性を向上させています。この頑丈な骨組みにより凹凸の激しい悪路などで車体が捻れたり撓んだりすることによるパワーのロスを防いでいるのですね。

これは登山靴も同じことが言え、高い剛性をもつ靴は不整地ほど真価を発揮します。柔らかい靴は靴全体が不整地形の凹凸をそのまま受け、ソールもロールして踏ん張りがききません。ソールパターンも倒れやすくフリクションが犠牲になりがちです。柔らかいアッパーは当然足首や甲などの保護力も弱いです。なんで、柔らかい靴は悪路では安定性が悪く滑る疲るというわけです。軽くて安めの値段設定なので、どうしてもみんな手を出しちゃいがちですがね。トムラウシや大雪山などを歩く一般的な用途の「登山靴」を想定しても、両手で 曲げようとしてもソールが屈曲しずらい程度の靴の剛性はあったほうがいいです。

私が個人的に最も信頼して長年履いているバランスの良い登山靴は「ゴロー・ブーティエル」(写真真中・右端)。この靴は表出し皮革とゴアテックスブーティでできており、巣鴨の職人さんがカウンセリングと採寸のすえセミオーダーメイドで作ってくれるド定番。 やっぱりオーダー&革のフィット感と質実剛健な作りは逸品です。ソールを 張り替えながら茶色は14年、黒い方は7年履きました。今シーズンはガイドが忙しく計画もハードだったせいか、どちらもミッドソールが破損してしまい退任となってしまいましたが、すぐさままた新しいのをオーダー中です。そしてびっくりしたんですが、電話で森本さんのお話を聞いたところ靴の状態から私の体型や足幅の変化を指摘されるんです…。 そしてミッドソールにも皮革を使った特別スパルタン仕様の一足を提案していただきました。いやぁ出来上がるのが楽しみ!

で、シーズン中にピンチヒッターで購入したのが最近山の中で見かける機会が多い「スポルティバ・エクイリビウム」(写真左端)。これは特に同業者が履いている人が多いので、気にはなっていたんですよね。印象としては最新の靴ということもありとにかく軽量。足入れも既成靴としてはトップクラスでしょう。しっかりとしたシャンク・アッパー剛性、であるにもかかわらず足首の屈曲性もいいですね。フリクションも相当いいです。これはアルプスの岩稜むけということもあるのでしょう。ただし、足がかなり蒸れやすいのが気になりました。靴の総評としてはすいませんすっごく良いのですが、所詮プレタポルテとクチュールの違いです。その道うん十年もの職人さんのカウンセリング付きのゴローはやっぱりすごいですよ。私はどちらかというと新しもの好きな気性ですが、登山靴の関してはオールドスクール派ですね。履き続けてきた結果としてますますゴローが好きなんでしょうがないっす。

有限会社ゴローさん、矜持を持った素晴らしい仕事を続けていてくれて感謝です!

有限会社 ゴロー (goro.co.jp)