2023/12/26~2024/01/03 カムイエクウチカウシ山南西稜~コイカクシュサツナイ岳

皆様こんばんは。登山ガイドの西田です。今シーズンは海外遠征を控えているということもあり、トレーニングがてら年末年始は日高の山に入っていました。今回トレースしたルートはカムイエクウチカウシ山南西稜という長大なリッジで、静内から中札内までを尾根伝いに踏破するといった計画でした。パートナーは北海道でも名うての山屋であるDZ氏。要した期間は9日間(停滞1日)。概ね天気は良かったのですが、2024/01/02が強風で厳しかったですね。ナナシ沢から1823へ吹き上げてくる風に運ばれてくる雪によってテントが破壊されるような出来事も…。何はともあれ、とっても美しい雪稜で、ずーっと行きたかったルートを踏破できて感無量です。良き山とパートナーに感謝です!

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2024年 あけましておめでとうございます!今シーズンもよろしくお願い致します!

みなさまこんばんは。登山ガイドの西田です。遅ればせながらあけましておめでとうございます!年末から日高山脈のロング山行およびガイディング等々が続いておりまして、ご挨拶が遅くなってしまいました。

今年は年明け早々色々な事件がありましたが、シーズン中のガイディングも皆様とともに改めて安全第一に催行させていただきたいと心を新たにした所存でございます。

ちなみに、アイキャッチ画像の写真の内容は、左上からGWトムラウシから表大雪の遠望、忠別沼付近の木道、K2遠征のオリジナルTシャツ&高所靴、裾合平のチングルマ、カムイエクウチカウシ山三股でのテント泊、霧多布のラッコ、北海岳付近のコマクサ、カムイエクウチカウシ山~ピラミッド峰から元旦初日の出…です!

今年もよろしくお願い致します!

2023年の登山ガイドを振り返ってみて。


皆様こんばんは。登山ガイドの西田です。
今年も早いもので、あとわずかとなってまいりましたね。
今シーズンもたくさんのお客様と山行をご一緒させていただきまして、改めて感謝の念にたえない次第です。

今シーズンの特徴といえば、数日を要する縦走の計画だったり、厳冬期の冬山だったり、沢ルート(カムエク)だったり、大変な山行も少なくありませでした。 しかしながら、色々な準備やお客様とのやりとりを経て、その方にとって大切な山をご一緒させていただけるということは、何より光栄でした。

幸運にも今シーズンは天候に恵まれた計画が多く、私がご依頼を受けた幌尻は6回とも全て登頂が出来ました。
シーズン後半は夏の暑さの名残もあって、紅葉はパッとしませんでしたが、降雪直前までかなり温暖な状況で驚くばかりでした。
まぁその次の週には雪が降ったりして、かえって油断も出来なかったのですが。

また、今年はヒグマの脅威を改めて感じた年でもありました。私のガイディング中は意外とヒグマに出会う回数は多くはなかった(3回)のですが、白雲の小屋が利用停止になってルート変更を余儀なくされたり、登山中ではありませんが阿寒町で友達がヒグマにやらるという出来事まで起こってしまいました。 大千軒岳で登山者が被害にあったのも記憶に新しいところですね。

温暖化による天候の変遷やヒグマのリスクなど、山岳環境は前とは明らかに変わってきているように思います。
私たちも柔軟に環境変化に合わせて、安全な登山を目指したいものです。
みなさま、今年はありがとうございました。また来年も良き山をよろしくお願いいたします。

2023/12/15 令和6年シーズン幌尻岳関連施設の予約開始のお知らせ

皆さまこんにちは。登山ガイドの西田です12/15の夜中の0時より表題の通り、幌尻岳の関連施設のネット予約が始まります。幌尻山荘の予約といえば人気の日程はすぐ埋まってしまいますから、まずはご予約を頑張ってくださいませ。 私の来シーズンの予約傾向は昨年よりは落ち着いている感じなので、予約の殺到状況も昨シーズンよりは緩和されるかもしれませんね。 来シーズンの予約はガイド枠があるので、ガイド登山の場合は関連施設も先行予約が可能です。ガイディングをご希望の方はお知らせください。

よろしくお願い致します~。

https://horoshiri-biratori.jp/

2024年6月、スパンティーク遠征のお知らせ

皆さまこんにちは。登山ガイドの西田です。昨今なかなかどうして海外遠征が活況の北海道の山岳シーンですが、実は私も計画しておりまして。来年はパキスタンはスパンティーク峰(7027m)への登山遠征を計画しております。日程は夏シーズンの繁忙期に入る前の6月から。その間はお客様にはガイドのご案内が出来ませんが、何卒御理解の上ご了承くださいませ。7000mオーバーは自分の中でも初挑戦なので、どうなることやらですが、 帰ってきたら土産話でもいたしますね~。 よろしくお願い致します!

WAFA ウィルダネスファーストエイド(野外災害救命法)更新

皆様こんにちは。先日はタイトル通りWAFA ウィルダネスファーストエイド(野外災害救命法)の資格更新の講習を受講してまいりました。WAFAは数あるファーストエイド体系の中でも野外救命に特化している非常に実践的な内容のもので、個人的にはガイドには必須の技術かと思っています。講習では、基本的な知識レクチャーはもとより、森の中で頭に怪我をして痛がってうずくまっている人が居ます、さてどうしますか?!という感じの現実の雰囲気に近いドリルが出題されたり、とても実践的でまさに緊急現場の緊張感がシミュレートされた内容になっています。実際の登山や自然の中では、日赤や消防などの都市型レスキューでは対応ができないような状況も多くあるわけで、WAFAの実践的なレスキュー技術はとても有用だと感じています。講習では近隣のガイドさんもたくさんいて、様々な知己をえました。 こういうのは、やっぱりやっていないと人間忘れてしまうもので定期的に練習しないとだめですね。 とても身になる内容で、間違いなく役に立つので、ご興味のある方は受講されてみるといいと思います。

おすすめの山の本「クマにあったらどうするか」


みなさまこんばんは。西田です。今日はおすすめの本のご紹介。
昨今世間を騒がせているクマさん達ですが、とりあえずクマの事を知りたかったらこれを読んでください、というのがこの本です。
この本の語り手は姉崎等さんというアイヌのハンターさん、聞き手は片山龍峯さんという私の両親の知り合いでしてね。

アイヌ民族の知識は間違いなくこのアイヌモシリ(北海道)の歴史を裏付ける、生活・文化的に重要な知恵だと僕は考えています。
「自然を畏敬し共に生き、この世に無駄なものは一つもない」とするアイヌの生き方をベースとした自然への知恵が、姉崎さんの言葉によく表れていると思います。 自然に寄り添う現場からの知恵としてのクマ対策が、今の世の中には必要なんではないでしょうねぇ。

文中にはオソのような熊はなかなか捕まらないといった予言もされていて、読み物としても面白いですよ。
北海道の自然が好きな本格派の方にはぜひ。

2023/11/04 斜里岳登山ガイド

皆様こんばんは。ガイドの西田です。先日は関西からおこしのS様と晩秋の斜里岳へ登ってまいりました。

この時期は大体登山道下部は夏道で、ガマ岩から上あたりは雪が出てくるということが多いように思いますが、やはり今年は暖かいのでしょうね、頂上まで全く雪はありませんでした。麓から頂上までずっとプラス気温。この先冬の北海道はどうなってしまうんでしょうねぇ。アイゼン歩行の訓練でも出来ればと思いきや、そつなく2時半には下山出来てしまいました。

S様、この度はありがとうございました。また遊びに来てくださいませ~。

2023秋、最近のヒグマ事情

皆さまこんにちは。ガイドの西田です。最近とみに北海道のみならず日本全国で熊の人身事故や被害が頻出しており、マスメディアのニュースで取り上げられることが多くなりましたね。北海道でのヒグマの事故も2013年あたりから右肩上がり的に増えており、特に令和の時代に入ってからは、被害件数の増大はもとよりハイキングや登山行動中の事故も見受けられるようになってきてしまいました。つい先日は大千軒岳で登山者の事故があった模様ですね…。白雲の避難小屋でも随分長いことヒグマが近くに居座ってテントサイトが利用不可となっていたのも記憶に新しいところです。

そして、10月の半ばほどのことですが、とうとう私の友人からも被害者が出てしまいました。林道で親子熊に出くわし、肩を噛まれて複雑骨折。眼もやられて失明も懸念されるような事態だったようです。いよいよヒグマの脅威の拡大を実感してしまいましたね。昔の開拓時代のような北海道に戻ったかのようです。

さて、それでは登山活動において、どうこの昨今のヒグマ事情を乗り切るべきなのでしょうか。これはもう色んな事を一つ一つ注意深く行動するしか無いと思います。基本的に熊と鉢合わせにならないための行動をとる。 これは熊鈴、ホイッスルなどの利用(絶対に有効な手段ではないとも認識すべき)もそうなのですが、山の中、林道で素早い移動形態(走る、自転車、スキー)は用いるべきではないです。幌尻でトレランをやっている人が偶に居ますが、そのうち事故が起こりそうで怖いですね。沢沿いでもお互いの物音や存在が瀬音によってかき消されるので注意が必要です。また早朝薄暮時の行動は避ける。熊スプレーは必ず携行。連絡手段も必ずもつ。ヒグマ誘引となる匂いの元は身に着けない(落とさない)、などなど。ザックのデポはやばいという認識ももう流石に定着してきましたかね。基本的なことは守りたいところです。

皆様どうかご安全に登山されてくださいね。

登山靴の話(ゴロー・ブーティエル vs スポルティバ・エクイリビウム)

こんにちは、登山ガイドの西田です。登山において行動中にもっとも重要なギアといえば、それはもう登山靴ということになりますね。私は職業柄、登山靴には毎日毎日晴れの日も雨の日も大変お世話になっております。また、重要なギアなので最もこだわりや愛着も強いですね。ガイドは重めの荷物を担いでお客様の安全を確保しながら怪我無く、さまざまな悪路を年間何十日も歩き続けなければなりません。まぁ当然ですが登山がハードになるほど登山靴の重要性は増していきますね。それは一般登山者にも同じなのですがこれは軽視されがちで、山で見かけるかぎりスニーカーとそれほど変わらないような柔かめのライトな靴を履いている人が多いですね。「登山靴」といえないようなスニーカーに近いもの、トレランシューズやアプローチシューズを履いている人も多いです。が、基本的には足腰の筋力の弱い一般登山者の方が登山靴にかかる重要性は強いのですがね。 若い人やパワーのある人は、体力で全てをカバーすればスリッパでもなんでも大丈夫です笑

端的に申しますと、柔らかすぎる靴は登山行動中のリスクに繋がりやすいです。歩みスピードも落ち且つ疲労しやく、雪渓やザレ、岩稜などの不安定地形にも弱いです。なぜでしょうか?4WDの車の構造を考えてみましょう。スズキのジムニーやランクルなどの車はラダーフレームといって、シャシーがはしご状の構造になっており車体の剛性を向上させています。この頑丈な骨組みにより凹凸の激しい悪路などで車体が捻れたり撓んだりすることによるパワーのロスを防いでいるのですね。

これは登山靴も同じことが言え、高い剛性をもつ靴は不整地ほど真価を発揮します。柔らかい靴は靴全体が不整地形の凹凸をそのまま受け、ソールもロールして踏ん張りがききません。ソールパターンも倒れやすくフリクションが犠牲になりがちです。柔らかいアッパーは当然足首や甲などの保護力も弱いです。なんで、柔らかい靴は悪路では安定性が悪く滑る疲るというわけです。軽くて安めの値段設定なので、どうしてもみんな手を出しちゃいがちですがね。トムラウシや大雪山などを歩く一般的な用途の「登山靴」を想定しても、両手で 曲げようとしてもソールが屈曲しずらい程度の靴の剛性はあったほうがいいです。

私が個人的に最も信頼して長年履いているバランスの良い登山靴は「ゴロー・ブーティエル」(写真真中・右端)。この靴は表出し皮革とゴアテックスブーティでできており、巣鴨の職人さんがカウンセリングと採寸のすえセミオーダーメイドで作ってくれるド定番。 やっぱりオーダー&革のフィット感と質実剛健な作りは逸品です。ソールを 張り替えながら茶色は14年、黒い方は7年履きました。今シーズンはガイドが忙しく計画もハードだったせいか、どちらもミッドソールが破損してしまい退任となってしまいましたが、すぐさままた新しいのをオーダー中です。そしてびっくりしたんですが、電話で森本さんのお話を聞いたところ靴の状態から私の体型や足幅の変化を指摘されるんです…。 そしてミッドソールにも皮革を使った特別スパルタン仕様の一足を提案していただきました。いやぁ出来上がるのが楽しみ!

で、シーズン中にピンチヒッターで購入したのが最近山の中で見かける機会が多い「スポルティバ・エクイリビウム」(写真左端)。これは特に同業者が履いている人が多いので、気にはなっていたんですよね。印象としては最新の靴ということもありとにかく軽量。足入れも既成靴としてはトップクラスでしょう。しっかりとしたシャンク・アッパー剛性、であるにもかかわらず足首の屈曲性もいいですね。フリクションも相当いいです。これはアルプスの岩稜むけということもあるのでしょう。ただし、足がかなり蒸れやすいのが気になりました。靴の総評としてはすいませんすっごく良いのですが、所詮プレタポルテとクチュールの違いです。その道うん十年もの職人さんのカウンセリング付きのゴローはやっぱりすごいですよ。私はどちらかというと新しもの好きな気性ですが、登山靴の関してはオールドスクール派ですね。履き続けてきた結果としてますますゴローが好きなんでしょうがないっす。

有限会社ゴローさん、矜持を持った素晴らしい仕事を続けていてくれて感謝です!

有限会社 ゴロー (goro.co.jp)